メキシコ風春雨スープ
修行を始めてから随分経つのに、全然モレの作り方も教えて貰えず、本当に教えて貰えるのかなと言う不安を毎日抱えていた頃、モレの仕込みを1人で全て担当しているサポテコのDoña(メキシコで威厳のある年配女性に対して使う言葉)に、
「こんな物があるから、sopa de miso(味噌汁)を作って」
と言われて手渡されたものが、春雨でした。
Doña(ドニャ)は皆に尊敬されていて、chefよりも偉い立場にある威厳のある女性なので、近寄りがたいしめちゃめちゃ怖いんです。
味噌汁に春雨は入れないんだけどな、と思いながらとにかく何が作ろうと思い、チャプチェにしようかと思っていましたが、メキシコにもパスタのような麺で作るスープがあったのを思い出し、春雨スープを作る事にしました。
仕事中だったのであまり写真は撮れませんでしたが、メキシコの唐辛子を使い、ちょっと辛めに仕上げました。
作り終わったら、スタッフのみんなが食べたい食べたいとめちゃめちゃ言って来ました(笑)
きっと日本人の僕がどんな料理を作ったのか興味があったのでしょう。
そしてなんと、滅多に姿を見せないJefaが2階から降りて来て、
「凄く美味しかった、こんなに美味しいのは今まで食べた事がない」
と褒められました。
とても嬉しかったです。
そして、なんとその日以来DoñaがBeso(頬を合わせる挨拶のキス)を僕に求めてくれるようになったんです。
僕は見知らぬ外国人ですし、キスの挨拶の習慣が無いのはみんな分かっているので、男性とは拳と拳で挨拶しますが、女性には今までは言葉で挨拶するだけだったんです。
正直おばちゃんが頬を出して求めて来た時はびっくりしましたが、あれだけ怖いと思ってたおばちゃんがそんな仕草をするものだから、なんだか可愛く感じました(笑)
良く考えたらJefaに褒められたしきっとDoñaも気を良くしたのでしょう。
そして、もしかしたら僕の事を認めてくれたのかなと思い、とても嬉しかった事は今でも忘れません。
その日以来、Doñaが劇的に優しくなりモレを教われる事になりました。
慣れないキッチンでプレッシャーも感じましたが、頑張って良かったなと思いました。
メキシコ風チキンカレー
モレの仕込みもなんとか全て教わり、オアハカ修行も最終日を迎えました。
こんな見知らぬ外国人の僕に皆さんとても良くしてくれたので、恩返しに、今日の賄いは僕に作らせてくれと言いました。
オアハカはモレで有名ですが、似た料理のカレーはまだ馴染みも少なくchefしか知らない様でしたのでそれならと思い、カレーを作る事にしました。
骨付き鶏もも肉を使い出汁をとり、玉ねぎをソフリットして丁寧に旨味を引き出して作ったカレーに和風の出汁も加えて、我ながら絶品に仕上がりました。
そしてまたメキシコ人が好きなエッセンスを入れようと思い、アバネロの風味を加えました。
オアハカにはモレアマリージョという見た目はカレーにそっくりな黄色いモレがあります。
だからこそみんなびっくりするほど美味しかったみたいです。
喜んで貰えて本当に良かった。
そして最後にお店の包丁、仲良かったスタッフの包丁を全て研いで帰りました。
本当に貴重な経験をありがとうございました。
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